TALEPOT interview002

ハッピーJACKの歩み

~ 自分の仕事が、社内の誰かの仕事と相乗効果を生む ~

※本記事は、外部パートナーがテイルポットのスタッフに取材をして作成したものです。

日に日に激しさを増すIPビジネス業界。そんな中、独自の手法で成果をあげているのがテイルポットだ。2018年に“現役ライトノベル作家がシナリオを書く会社”として設立され、以後はたしかな品質のシナリオを立て続けに発表。今やゲーム業界内で、確固たる地位を築いている。

そんなテイルポットの活躍はゲームシナリオだけには留まらない。現在テイルポットは、音声作品やライトアニメなどにも活躍の幅を広げている。そんなテイルポットの運営する様々なコンテンツの中で、とりわけ存在感を放つのがYouTubeで配信される動画作品だ。そして2025年にはSNSに特化したアニメブランド「ハッピーJACK」を設立。その第一弾として、完全新規IPとなる『どーまんぶ!』を発表した。

ハッピーJACKはテイルポットの今後を語るうえで欠かせない存在になりそうだ。今回は『どーまんぶ!』のディレクター、刈野ミカタ氏にハッピーJACKのこれまでのこれからについて、話を聞いた(ハッピーJACKの公式プレスリリースはこちらから)。

テイルポットもハッピーJACKも“楽しい現場”

――まず刈野さんとテイルポットに合流するまでの話を聞かせてください。

私は2009年に新人賞で佳作を受賞して、そのままライトノベル作家になりました。作家をやりながら、その後はゲームシナリオの仕事をやったりして、テイルポットに合流……いや、合流というのはちょっと違うかな。

もともとテイルポットは3人のライトノベル作家が立ち上げたのですが、その3人と知り合いだったんですね。特に三河ごーすととは、デビュー前から友だちで。昔から作品の構想を語り合ったりしていました。その関係で「テイルポットでこういう仕事があるんだけど~」と誘われて、パートナー作家として一緒に働くようになった感じですね。

――お仕事の付き合いではなく、まず個人的な友人関係があったと。

そうですね。最初のうちは、ゲームシナリオの仕事を中心に請け負っていたんですが、その頃は育児もありまして、なかなか大変でした。でも、次第に育児のペースが掴めて、他の仕事にもリソースを振れるようになったので、ハッピーJACKの活動も始めたんです。

現在は「ハッピーJACK」で配信している『どーまんぶ!』の設定やキャラクター作り、本編や関連シナリオの執筆、実際に動画を作る担当者の方のディレクションに、イラストの発注管理、声優さんへのディレクション、各種SNSの運営、基本的にはすべて担当しています。

――そこまで担当するのは大変じゃないですか? 作家とはまったく異なる能力が要求されると思いますが。

もちろん大変です(苦笑)。でも、私自身が作家の頃から「作品のクオリティを上げる」から「作品をどう売り出していくか?」という点を考えるタイプだったんですね。いわば広報や演出の分野に関心があったんです。そのことが、今やっているような動画のディレクションにも柔軟に対応できる下地になっていると思います。それに、テイルポットが無かった頃から、私は三河ごーすとや、後にテイルポットに所属する面々と相談して、あれこれやっていたんです。あの頃の延長として働けているので、大変だけど楽しいですね。

『どーまんぶ!』とハッピーJACK

――先ほど『どーまんぶ!』の名前が出ましたが、詳しく聞かせてください。『どーまんぶ!』は、テイルポットのオリジナルIPであり、ハッピーJACKで展開されている現在進行形の作品です。まさに今のテイルポットの看板作品の一つかと思いますが、そもそもこの企画は、どのように起こったのでしょうか?

そもそもの話をすると……『どーまんぶ!』はコミック向けに考えた企画なんです。もうテイルポットはYouTubeチャンネルを持っていて、漫画エンジェルネコオカで漫画動画の配信を行っていました。で、僕から三河ごーすとに、「漫画動画をテーマにした青春ものを作ればいいんじゃない?」と軽く提案したら、「じゃあ刈野さんが作ってよ」と(笑)。それでキャラクター設定などを書いたのが、『どーまんぶ!』の原型ですね。最初は出版社のコミック編集部に持ち込むつもりだったのですが、三河ごーすとから「これをテイルポットの企画にしたい!」と言われまして。

その後『どーまんぶ!』の次の展開を考えていたのですが、そこから紆余曲折ありまして(苦笑)。でも、その過程で、試しに『どーまんぶ!』を、いわゆるライトアニメの形で作って貰ったら、想定以上に高いクオリティに仕上がったんですね。それで「これはライトアニメとして行けるんじゃないか?」となって。そこから本格的にスタートした感じです。

――なるほど、まずハッピーJACKの前に『どーまんぶ!』があったわけですね。

そういうことです。ちなみに「ハッピーJACK」というブランド名も『どーまんぶ!』から取っています。「ハッピーJACK」は、『どーまんぶ!』の主人公たちが運営する架空のYouTubeチャンネルの名前なんですよ。

――『どーまんぶ!』ありきでハッピーJACKが始まったわけでしょうか?

いえ、それもちょっと違いまして。順を追って説明しますね。
その『どーまんぶ!』のライトアニメ版の試作が作っていた頃、テイルポットは『義妹生活』と『クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。』のテレビアニメ放送を控え、様々な業界の人たちと関わるようになっていました。その中で、IPホルダーの需要に対して制作会社が足りない、映像化したい作品があっても映像化できない、といった声をよく耳にしました。

それなら、自分たちが作っている『どーまんぶ!』のようなライトアニメは、IPホルダーの皆さんや、これからIPを持ちたい皆さんにとって、魅力的な選択肢になるのでは……と考えたんですね。

“パートナー企業との共同IP制作もできるSNSアニメブランド”そんな構想が生まれて、そこに「ハッピーJACK」というブランド名を付けたんです。だから『どーまんぶ!』は、未来のスポンサーさんに向けて「テイルポットなら、こういう感じのライトアニメが作れます」という、一種のポートフォリオ的な意義もあるんですよ。

――紆余曲折があったわけですね。それにしても、ここまでお話を伺っていて、シナリオから動画制作へのジャンルをまたいだ挑戦や、『どーまんぶ!』の企画が走り出すまでの紆余曲折に対応できたのは、やはりテイルポットの環境が決め手だったのでしょうか? もし、テイルポット以外で、今と同じような状況になったら……。

やってない(笑)!

――即答ですね(笑)。

本当に想像できませんね(苦笑)。とても複雑なことをやっている自覚はありますし、結果だけを取り出して、同じことをやるように言われても……想定できません。ハッピーJACKにせよ、『どーまんぶ!』にせよ、方針転換は何度もありました。でも、そのたびにテイルポットのメンバーと話し合って、問題を解決していって。その過程が純粋に楽しいんですよね。言ってしまえば、どの作業もメチャクチャ楽しくて、苦労らしい苦労はないです。むしろ新鮮な体験ができていますね。

たとえば……私は自分の作ったキャラクターに本格的に声がつくというのを『どーまんぶ!』で初めて経験しました。一番最初の収録で、自分のシナリオを声優さんに読んでもらったのですが、これが物凄く恥ずかしかった(笑)。これまで色々な経験をしてきましたし、平気だろうと思ったんですが……「やめて!」と思うくらいで(苦笑)。自分でもビックリしました。

――それでは『どーまんぶ!』の見所や、今後の展望を教えてください。

『どーまんぶ!』では個性の強いキャラクターたちのコント動画も配信しています。けっこう攻めた内容をあげているので、アカウントがBANされる前に見てください……と、いうのは冗談として(苦笑)。『どーまんぶ!』は今後も色々な展開を用意しています。良い意味で「こんなことまでするの!?」と思ってもらえるものをたくさん用意しています。

『どーまんぶ!』に関して言うと、凄いことが本当にあっさりと決まるんです。「〇〇をやってみる?」「そうしよう!」みたいな。当事者なんですけど、「いやいや、それくらいのノリで決まる?」とビックリするくらいです。なので、色々と仕込んでいますので……ご期待ください!

テイルポットの強みは、組織体制にあり。

――ここまで伺ったお話の中でも、テイルポット自体のフットワークの軽さと柔軟性は、凄く高い印象がありますね。

フットワークは軽いですね。『どーまんぶ!』でいうと、たとえば動画を作るまでの時間も短いので、流行や時事ネタを取り入れる速度は、他のライトアニメと比べてもぶっちぎりに早い。「これやろうか?」「やろう!」の展開が早い。思いついてから……1か月くらいで形にできます。

なので、スポンサーさんからご相談をいただければ、新しいIPを結構なスピード感で作れると思いますね。条件にもよりますが1年くらいでしょうか。テイルポット側で『どーまんぶ!』以外の「企画の種」も色々用意していて、そこに出資していただく形なら、もっと早いです。
そういうわけで、スポンサーさんも大募集しています(笑)。

――では最後に、刈野さんが考えるテイルポットの強みを教えてください。

さっき話題に出ましたが、まずフットワークの軽さは凄いですね。普通の会社だったらもっと時間をかけるような決定が、比喩ではなく“秒で決まる”こともありますし。もちろん、何も考えずに決めているわけではありません。その決定に至るまでは、数年後まで見越したグランドデザインがあります。そのグランドデザインに向けて誘導されている部分はあるかもしれませんが、何かを強制されているわけではない。主観的にはとても自由にさせてくれるのでモチベーションも高いです。

困ったときに相談できる友人も周りにたくさんいるのも強い。あとは組織内の相乗効果もありますね。

――相乗効果ですか?

はい。テイルポットでは、自分や、自分のチームの仕事が、自分が関わっていない仕事に影響を与えることが多いんです。たとえば……自分は『義妹生活』『クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。』のYouTubeやテレビアニメにほとんど関わっていませんが、そこで得たノウハウや繋がりをもとに、ハッピーJACKの運営をしています。

今後も、こうした部門を跨いでの相互作用を起こしていきたいですね。出版社窓口対応の担当者と連携して、出版社の作品をハッピーJACKでライトアニメ化したり、逆にハッピーJACKのライトアニメを書籍化したり。あるいは、音声作品レーベルのMELLOW VOICEや、Vライバー事務所のB-Gradeとも連携していくとか。

こういったことが起きるのは、まずスタッフ同士の気心が知れていること、そしてテイルポットには色々なスキルを持ったメンバーがいるからでしょうね。みんな作家なんですが、作家+αなんです。「シナリオも書けるし、動画制作ができる」とか、「シナリオも書けるし、マネージメントもできる」とか。たとえば私の場合だと、テキストのライティングだけではなく、動画のディレクション、全体の進行管理もしています。

こうした色々なスキルを持った人材が揃うことで、組織内で互いに影響し合い、より良いものを出力する相乗効果が起きるんです。これは単純な足し算ではなく、“乗算”、かけ算に近い感覚ですね。テイルポットには多種多様なスキルを持つ人材が揃っているのは確かです。この点が強さであり、部門を跨いだ相乗効果を生みやすい環境に繋がっていると思いますね。

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